70代
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「いい髪だ」
わたしの大好きだったおばあさん。おばあさんはわたしのお母さんのお母さん。きれいでやさしいひとだった。おばあさんに会…
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白いベンチで待っていてね
あなたの「行ってきます」の声。私は顔を洗いながら「行ってらっしゃい」と言いました。あのとき、ちゃんと顔を見て言えば…
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なっ子へ
「ばあばは、どこに行ったの」。なっ子を送った夜、航羽(こう)と遺影に手を合わせた時、突然そう言われた。俺は一瞬、言葉…
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感謝とお詫びで─
日本が戦争に負けていなかったら朝鮮で親子六人それなりに平和な暮らしが送れていたかもしれない。引き揚げて裸一貫からの…
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幸せをありがとう
亡くなる二日前、あなたはあまり動かせなくなっていた両腕をベッドの中からのばして私の頭を力いっぱい胸に抱えこんで、ど…
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十分休んできてね
それは、あと二日で正月という日にやってきた。きっと、静かな正月を迎えさせようという心遣いであったと思う。それから半…
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お義父(とう)さん、平和をありがとう
お義父(とう)さん、あなたが平成四年八十歳で亡くなってから日本も変りました。今は、天国で原隊の戦友達とフィリピンでの…
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銭(ゼン)こ心配すんな
大学受験を終えて帰宅すると、父さんはいませんでした。膵臓炎(すいぞうえん)で「痛い痛い」と部屋中を転げ回ったと、母さ…
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「お父さんに見せてやりたかねぇ」
お父さんが42才の若さで、病気で亡くなってからもう60年余りの年月が流れました。僕は15才でした。妹も弟もいました。お母…
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母さんと思い出話がしたくて……
母さん。母さんが大好きだった吾亦紅(われもこう)が今年も居間から見える庭の隅で静かに風に揺れています。きょうは、母さ…