元気で何一つ人の助けを必要としなかった母さんは、桜の蕾
つぼみが膨らむ三月上旬、ぽっくりと遠い旅へと旅立ってしまいました。
あまりにも元気であったので母さんに親孝行らしきもの何一つしないままでした。
いつも、大好きな温泉に一緒に行きたい、好きな蒲焼きを一緒に食べに行きたい。そう思うだけで終ってしまいました。
母さんが亡くなって遺品の整理をしていると、箪笥の奥から小さな菓子箱が出て来ました。中を開けてみると、そこには私が母の日と、正月のお年玉にあげていた一万円がそっくりそのままでした。
封筒は開けないまま、キチンとそのままで積み重ね、数えてみると三十二枚です。三十二万円、どれも手をつけずに仕舞われていたのです。
いつも母さんは「もったいない、もったいない」そう言ってなんでも取っておく人でした。
戦後の食べるものもない貧しい生活の中を三人の兄弟を育ててくれました。少しでもお金をためなければならなかったのでしょう。
そんな母さんに子供があげたお金はもったいなくて使うことが出来なかったのでしょう。
このお金は使うことが出来ません。もったいなくて使うことが出来ないのです。私が亡くなるまでしっかり持っています。亡くなった時には孫達に「分けて下さい」と書いておきます。
ありがたいことです。こうしてみると、私も母さんの「もったいない精神」をしっかりと受け継いでいるような気がします。
母さんのもったいない精神は子供や孫にも受け継いでほしいと強く思っています。
母さんありがとう。少しでもお金をもったいない精神で残しておこう、子供や孫達のために。母さん、やっぱり僕は母さんの子供です。