母へ 70代 大分県 第10回 銀賞

古新聞の想い出
佐藤 愛子 様 79歳

 私が一歳の時、父は三十四歳の若さで他界。葬儀の時、いつもと異って人の出入りが多いからだろう、私と兄は大喜びで愛嬌をふりまいていたとのこと。それを見て親せきの人は皆んな涙したと聞きました。

母は何はともあれこの先の事を考え相当のつらさをいだいてたと思う。

母は何よりも読み書きが好きなのに本当言う本らしきものも無く、もちろん新聞さえも買えない正に貧困母子家庭であった。私がもの心ついた頃はおばの家から数か月遅れの古新聞をもらって来て、毎晩のように読み聞かせしてくれました。私たちの顔をみながら解説してくれました。おかげで私も読み書きの好きな子に育ちました。

小、中の修学旅行も行けなかったし、もちろん高校進学の夢も夢で終った。悲しみや不満は無かった。食べるのがやっとの生活を理解してたからだと思う。

十八歳の時、初めてローカル紙の読者の声欄に投稿しました。これからも挑戦しなさいの母の一言で、要介護1になった現在も挑戦し書き続けている。私は二人の息子に恵まれ、幼い時から読み聞かせに取り組んだ。

長男は公務員、次男は研究者として頑張っている。読み聞かせ法は孫育てにも役立った。この春、同居している孫二人が地元の大学を卒業しましたよ。母さん、貴女の見知らぬ曾孫ですよ。上の子は研修医として、下の子は教師として社会へ一歩踏み出しました。生活は貧しくとも心豊かに私達を育ててくれた賜物だと思います。

お母さん、本当にありがとうございました。お母さんの解説入りの読み聞かせ法は、我が家の宝として、明るい未来へと伝えたいと思います。

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