夫へ 60代 福岡県 第4回 入賞

天国からの便り
野口 祐子 様 69歳

 角張った大きな文字、簡潔な文章。紛れもなく、なつかしいあなたからの便りです。消印は今年7月11日、7年前に亡くなった夫から、でもなぜ今ごろ……?

落着いて見れば、10年前に開かれた「山口きらら博」の記念スタンプが……。おそらく会場のタイムカプセルに投函していたのでしょう。ようやくあなたのいない寂しさに慣れてきたところに、突然なつかしさで涙があふれ、夫の得意げな笑顔が浮かびました。

「娘の結納を済ませ、安心しての旅です。孫は何人いるかな」と結ばれていました。一人旅を好んだ夫が10年後を夢見て投函したのでしょう。残念なことに翌年に発病し、3年後に帰らぬ人となりました。

あなたを見送るように誕生した孫は3人。この春には2人が1年生になりました。念願だった端午の節句には大きな鯉を泳がせ、運動会、入学式と行事のたびに、何より孫の成長を一緒に楽しめなかったことが残念でなりません。

夏休みに入ってすぐ1年生の2人が「あゆみ」を供え、小さい手を合わせていましたね。「あゆみ」の意味も良くわからない2人の可愛い姿が見えましたか……孫達にはあなたの姿はどのように映っているのかしら……? 来春には又孫娘の誕生です。あなたと歩いて来た足あとを、この子らがそれぞれの未来に向かって繋いでいってくれるのでしょうね。

娘達は今まさに子育て奮闘中。確実にたくましい母親に成長し、私の役目もそろそろ終りそうです。

お盆の送り火には、みんなで大きなローソクにたくさんの返事を書きました。3才の孫は、お気に入りのマークをすき間なく重ね書きして、白いローソクが真っ黒になってしまうほど。あなた、届きましたか。ありがとう。

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