何故に突然、こんなにも伝えたい気持ち「ありがとうお父さん」と、その一言を伝える時間も私から奪いさった主人の死。「幸福な二十七年間の結婚生活だったよお父さん」せめて、一言。もし伝えられていたなら、これから先の私の生き方にどんなに大きな張りと心の灯し火になった事でしょう。現実は厳しく悲しく辛すぎました。
あなたは二十七年前、私との結婚と同時に三人の娘達のお父さんになってくれましたね。その娘達も長女、次女と結婚し三女は自立で家を離れた時に、お父さんは言いました。「これから二人の新婚生活だなー」と笑ってましたね。実の親以上に娘達を愛してくれ、やっと親の責任を果たした安堵感を私はお父さんの笑顔で感じとりましたよ。一年一年を大切に育み合っての日々の中で私の乳癌手術、どんな時にでも支えてくれたお父さんありがとう。そんなお父さんに「後二年したら競馬場巡りを二人でしようね」と約束していたのに、約束も果たせずにくやしい思いだけが残っています。側にいてくれるだけで安心して生活できましたよ。娘達の躾は厳しく叱る時は本音で、父親としての優しさもあり、素直に育った娘達がその証ですね。五人の孫達も「じいちゃん、じいちゃん」とお父さんの事が大好きでしたね。何度ありがとうと言っても言いたりない程素晴らしいお父さん。
「明日温泉に行こうな」を私と交わした最後の言葉にその一時間後のお父さんの死。きっと私に言いたい事が沢山あったでしょうね。私も伝えたい「天国のお父さん、私はお父さんと出合えて世界一の幸福者でした。二十七年間ありがとう」と。涙を流すのをやめましたよ、いつまでも私の心の中で生きて励ましてくれていると信じているね。永遠の眠りについた時の安らかなお父さんの顔、脳裏に焼き付いています。きっと満足に生きた六十年間だったよと私に伝えてくれていると、今でも私は信じています。「ありがとうね、お父さん」