もうすぐあなたの四十九日。でもまだあなたが側にいないことが信じられなくて、毎日あなたの写真に話しかけては泣いています。
あなたとは出会って半年で結婚しましたね。あなたは蕎麦屋で働いていて、いつか二人で蕎麦屋を開くのが夢でした。
それなのに結婚して二か月後に腫瘍(しゅよう)が見つかり、たった六年であなたは逝ってしまいました。二人で思い描いた夢に一歩も踏み出すことなく。
入院、手術の連続で、二人で一緒に家で過ごしたのは、実際には五年間もないくらいでしたね。その間に、あなたが昔一緒に修業した蕎麦屋の仲間たちは次々に独立して自分の店を持ち、あなたはどれだけ悔しかったことか。私はちゃんと分かっていましたよ。
でも、あなたは何度再発しても、「次こそ最後の手術だ」と、決して諦めませんでした。その姿にどれだけ私も救われ、支えられたことでしょう。
一方では、「こんなことになって申し訳ない。もう別れていいから」と涙をこぼしましたね。そんな時、私はたまらなく切なくなって、「ずっと一緒にいるよ」と二人で泣きましたね。
もう手術も不可能になった時、私達は自宅で最期を過ごすことに決めました。
三十九歳という若さで、私におむつを替えてもらうあなたはどれだけつらかったでしょうか。私もおむつ交換なんて初めてでしたから、あなたも大変だったでしょう。ごめんね。
先日、あなたがメモしたレシピやアイディアがたくさん詰まったファイルを見つけました。懐かしいあなたの字と三年前までの日付に、私が看病と生活の事で頭がいっぱいだった時に、あなたはまだ夢を諦めていなかったのだと涙があふれました。本当に二人で蕎麦屋をやりたかったのに、いつしか私は日々に追われていて、一緒に夢を追っていなかったのです。本当にごめんなさい。
蕎麦屋は一緒にできなかったけど、ちゃんと最期まで一緒にいましたよ。
あなたのいない毎日はとても味気ないけれど、あなたが教えてくれた諦めない心を持って、いつかまた会える日まで、精いっぱい生きていこうと思います。今度会ったら、二人で一緒に蕎麦屋をやりましょう。今から楽しみにしています。