天国でのんびり暮らしていますか?
あなたがいなくなって二十年以上たち高校生だったケンはもう四十歳、立派な中年です。「お父さんはこの辺が薄くなりつつあったね」としきりに髪を気にしています。あなたが亡くなった年齢に近づいてきたので「オレも死ぬような気がする」などといっています。私は還暦をすぎ白髪が増えました。
若い頃アイシャドーも口紅もつけて「どーお?」といったら「えみりはお化粧をしない方がかわいいね」といったから、今でもファンデーションをつけず“素肌美人”をめざしています。朝晩マッサージを欠かさずお肌のお手入れはバッチリです。「エステ行った? お肌がキレイ」「なんでほほがたるんでないの?」「若い」などといわれています。会う時を楽しみにしていてくださいね。
六十歳以上の劇団に入りました。お芝居はとても楽しいです。オーディションの時「今までで一番悲しかったことを思い出してください」といわれ困っていたら耳元で「えみりがんばれよ」とあなたの声がしたのでどっと涙がでて合格しました。なつかしい手の感触もしましたよ。そのときのビデオを見てケンが号泣した、とヨメの陽子が教えてくれました。
「えいやーっ!」というセリフをいう時、相手役の人が「えい・やーっ」と切るんだよというからその通りにしたら「切らないで下さい」と演出家にいわれました。すぐに人のいうことをきく、“付和雷同”だとよくあなたに叱られていたのに、まだ治っていません。
今はケンがしっかりと守ってくれるしお嫁さんもやさしいから安心して下さい。