夫へ 50代 宮城県 第8回 銀賞

あなたへ
佐藤 せつ子 様 59歳

 震災から、4年7ヶ月が過ぎました。

仏壇のあなたの写真を見ながら「どうしてここに飾られているのだろう」と不思議に思うことがあります。何年過ぎても、その気持ちは変わることがないと思います。あなたのそちらでの生活が平穏であることだけを願うばかりです。

今回はあなたに報告することがあり、手紙を書いています。私、南三陸町へ帰る決断をしました。困難なことがたくさんあると思いますが、いつかあなたに逢えたとき、「頑張ったな。ありがとう」と言ってほしくて決めました。

抽選のくじを引く時、あなたの形見の時計に祈ったのです。私達の母校の近くに出来る防災集団移転の土地です。見事当選しました。あなたが後押しをしてくれたと信じています。

震災の数日後、武彦と2人、あなたを探しまわったときは、もう二度と南三陸町には住めないと思いました。海が恐かったのです。

でも、仙台で暮らしていると、なぜか海が見たくなるのです。恋しいのです。今まで悩んでばかりで、「このまま仙台にいた方が生活が楽なのではないか」と。自分の気持ちに正直に向き合ったとき、やはり南三陸町へ帰りたい気持ちが強かったのです。

新しい街づくりに参加したい。協力したい。私にできることから、一歩ずつ前に向かって進んでいきたいのです。

この4年7ヶ月、無駄に過ごしてきたつもりはありません。孫育てに参加させてもらいました。明奈・尊、そしてあなたの知らない結・顕、4人の孫達の成長を、いつかあなたに逢えたとき、いっぱい、いっぱい、おはなしをしますね。

家が建つまで、あと1年先か、2年先かわかりませんが、お父さん・お母さん・あなたの位牌(いはい)を南三陸町へ連れて帰ります。

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