「一緒に帰りたいなあ」
入院初日。ばあちゃんはそう言ったよね。
それから1週間後ばあちゃんがオムツを頑なに拒否していると聞いたとき、私、すごく不安になった。一緒に住んで23年。私の前でおならひとつもしない人だったから。
さらに日は経ちばあちゃんがチューブで痰をとってもらうようになったとき私、不安で不安で涙がとまらなかった。
……弱っていくばあちゃんを見たくない。
そんな自分勝手な理由で、お見舞いにあまり行かなくなっちゃって……ほんとうにごめん。私、ずっと後悔して、謝りたかった。
久しぶりのお見舞い。すでに言葉が話しづらくなっていたばあちゃんは私を責めることもせず、にっこりと笑ってくれたよね。
それから覚えてる?病室の棚を指さしたことを。何かと思って開けたら、病院から出たおやつがたくさん入っていて、私、本当にびっくりしたんだよ。ジュースもあれば、ばあちゃんの大好物のプリンまであって。
いつ会いにくるか分からない私のために、取っておいてくれたと知ったとき人目もはばからず泣いちゃって……恥ずかしかったよね。
「お母さんに内緒だよ」そう言って幼い私にプリンをくれた昔の記憶。共働きの両親に代わって家に帰るといつも笑顔で迎えてくれた。時代劇を見たこと、縁側でお茶を飲んだこと。私の23年はいつもばあちゃんと共にあったこと、そのとき改めて思い出したから。
「ばあちゃんプリン大好きじゃん。食べなよ」と泣きじゃくる私に、ばあちゃんは「ぷりんおいしい。たべたらかえれ」と書いた。字が下手だと言って、あんなに書きたがらなかったのにばあちゃんは最後まで私を思ってくれたのね。
ばあちゃん、ありがとう。亡くなって8年、今でも会いたくてたまりません。
そちらにプリンはありますか。遠い未来、ばあちゃんと縁側に腰掛けまたプリンを食べたいな。その日を心から楽しみにしています。
たくさんの土産話を持って会いに行くから、どうかゆっくりゆっくり待っててね。