おじいちゃん、天国からあなたが届けてくれたスイカはとても甘かったですよ。
家族全員で大切に頂きました。熟れたスイカの最後の一切れを口にしたとき、あなたのひ孫はポトリと涙をこぼしたのよ。
「ひいじいちゃんのスイカ、いつも甘いね~」
小学生の双子の息子は、夏になると必ず届くあなたのスイカを楽しみにしてたんです。
けれど今年の4月、おじいちゃんは天国へと旅立ってしまったね。
あのスイカはもう食べられないんだ……。お店で大きなスイカを見るたび思いました。
でも今年の夏もまた、おじいちゃんからスイカが届いたときは腰をぬかしそうになったんですよ。
二度と見ることはないと思っていた、送り状に書かれた几帳面な文字を見て涙が溢れました。夏になったら孫達のところに届けてほしい―。あらかじめそんな約束を交わしてあったなんて誰が想像できたでしょう。
あなたは自分の死期を漠然とわかっていたんですね。
あなたは去り際まで粋な人でした。天国のポストから、おじいちゃんが私達を覗きこんで微笑んでいるような気がします。ちゃんと配達されましたよ。あなたの最後の送り状は引き出しにきちんとしまってあります。
本当にありがとう。
「お前達が中学生になるまで生きてるよ」
そう言って、深い皺の刻まれた手で子供達の頭を撫でてくれたこと、覚えています。長男が難病と
診断されたときも、自閉症がわかってからも「この子は大丈夫だ」と励ましてくれ変わらない優し
さで包んでくれた。
長男は少しずつ言葉数が増えて、玄関に置かれたあなたの写真を見ながら「ひいじいたん」と話
しかけています。泣きながらスイカを食べた次男は、親が言うのも恥ずかしいけれど、優しい真っ直ぐな子に育っています。でもね。
「もうスイカは食べない。ひいじいちゃんを裏切った気がする」なんて言ってるんですよ。
「大好きなスイカを食べられなくなったら、その方が悲しむよ」と言っても聞き入れません。
この頑固さはおじいちゃんに似たのかしら(笑)。
おじいちゃん、あなたの面影を宿したひ孫達をどうか、その場所でずっと見守り続けてくださいね。