おばあちゃんには会えましたか。
私たちのこと、思い出せましたか。
何かを繋ぎ止めるように毎日毎日チラシの裏に写生された天声人語の束から、あなたの手紙を見つけました。
『お医者様
お世話になって居ります。
なにもわからず、なにもできず、
大変困っております。
何卒、この病気を治していただけませんでしょうか。』
ごめんなさい。
私は変化に怯(おび)えてばかりで、あなたの不安に寄り添うことができなかった。あなたと向き合うことから逃げてしまった。一番不安だったのは、あなたなのに。
晩年のあなたを見て、神様を恨みました。
私の祖父が何をしたというのか。何故、最期まで美しく生きることを赦(ゆる)さないのかと。
しかし骨になったあなたをみて、その理由を知った気がします。
私たちがこの姿をみて悲しみに伏さぬよう、少しずつ、私たちの心を離していったのですね。きっとあなたは、優しすぎたから。
だけど作戦は失敗。
皆あなたを想い、涙を流しています。あなたがくれた時間は、晩年の苦労などとるに足らないものにしてしまうほど素敵なものでした。
だからどうか、次会うときは謝らないで。
また、あの柔らかいハーモニカの音色を聴かせてください。
ありがとう。本当に。