祖父へ 20代 大分県 第10回 入賞

十二年目のゴーヤチャンプル
廣田 絢子 様 27歳

 おじいちゃん、今年もゴーヤのカーテンができたよ。青々とした葉が、夏の日ざしをあびてキラキラと輝いています。もうすぐ、初なりのゴーヤでチャンプルを作るから待っていてね。

おじいちゃんの優しいまなざしと穏やかなしゃべり方、大好きだったよ。

小学二年生の時、登校中に雨が降りだして私がびしょびしょに濡れたんじゃないかと心配して、教室までタオルを届けてくれたね。でも、もう朝の会が始まっていて、廊下からそっとのぞいたんでしょ。それに気がついた男子たちから「誰かのじいちゃんじゃ」と、からかわれ、恥ずかしくて、私「ありがとう」も言わずにムスッとしてごめんね。

夏休み、ラジオ体操の後に子ども会のみんなの前で、手作りの紙芝居を披露してくれたね。あの時も、なんだか気恥ずかしくって、わざと知らん顔してしまいました。

犬のころが死んだ時は、「絢子が悲しむけん見せられん」と、雨の中、一人で庭に穴を掘ってころを埋めてしまいましたね。学校から帰ると、いつもころがいた場所に土が盛られ、花が供えられていたから、びっくりしたよ。

おじいちゃんはいつも私を大切に守ってくれていたね。そのことに、最後まで気づかずにごめんね。

おじいちゃんと最後に食べた夕食、おばあちゃんと私が作ったゴーヤチャンプル。あれ本当はおいしくなかったでしょ。中のわたを取るの知らなくて、そのままブツ切りにしたゴーヤがたくさん入っていたもん。でもおじいちゃん「おいしい。おいしい」ってたくさん食べてくれたね。

おじいちゃんが亡くなった次の年から、実家にはゴーヤのカーテンができるようになったよ。今年でもう十二年目。

そのあいだ、私は結婚して娘も生まれたよ。今さらだけど、親になって初めておじいちゃんに愛されていたんだなぁと気がついたよ。本当にありがとう。

感謝の気持ちを込めて、今年もとびきり苦いゴーヤチャンプル作るね。

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