祖父へ 40代 大阪府 第2回 銀賞

「ありがとう」おじいちゃん
加藤 美代子 様 48歳

 おじいちゃん、天国の暮らしはいかがですか。初めておじいちゃんに手紙を書きます。

 私生児で生まれ、五歳の時に母が家を出てしまい、残された私をおじいちゃんとおばあちゃんが育ててくれました。幼かった私は母を恋しがり、事あるごとに泣いたり我儘を言って二人を困らせてばかりいました。私が九歳の時に、母の死の知らせを受け、その翌年におばあちゃんが亡くなり、私はただ泣くだけだったけれど、おじいちゃんは悲しんでいる余裕なんかありませんでしたね。子供と孫の面倒を一人で見ることになってしまい、仕事で疲れて帰って来ても家事や雑用に追われ大変だったと思います。ごめんね、何も手伝うことが出来なくて。

 中学では給食が無かったので、お昼はパンにすると言うと「あほ、パンなんかで元気が出るか」と言って毎日早起きをして、お弁当を作ってくれた。進学を考える時期になり、学費の大変さなどを思って就職を選んだ私に「あほ、高校へ行け。いらん心配するな」そう言って高校へ通わせてくれた。

 結婚をして家を出た私。今度はおじいちゃん孝行をしなきゃと思っていたのに、主人の酒や賭け事で家計は火の車。孝行どころか逆にお金の無心をする始末。おじいちゃんはいつも何も聞かずにお金を渡してくれました。

 何の恩返しも孝行も出来ずに、私が二十七歳の時におじいちゃんは逝ってしまった。

 今の私は再婚をして平凡だけど幸せに暮らしています。おじいちゃんの次女の叔母とも仲良くしてもらっています。叔母曰く「あんたが生まれるまではとんでもない親父やったで、ちゃぶ台引っ繰り返すなんて日常茶飯事やった」

 頑固で昔気質、でも私にはいい思い出ばかり残っている。心配ばかりかけて、面倒ばかりかけて、出来の悪い孫でごめんね。

 まだまだ書きたいことはあるけれど涙腺が限界です。最後に全ての思いを込めて言わせて下さい。「ありがとう」おじいちゃん。

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