祖父へ 40代 千葉県 第10回 入賞

愛された記憶
大田 りつ子 様 48歳

 おじいちゃんへ。

「この子は体が大きいからスポーツをさせたらええ。」病室のベッドから、当時2歳になる私の娘を見て、そう言ってたのを今でもよく思い出すよ。その子も、先月ハタチになったよ。おじいちゃんの言った通り、高校生の時に全国水泳大会に出たよ。小さい枠だったけれど、全国で3位になった娘を誇らしく感じ、おじいちゃんに見てもらいたかったなぁと思いながら表彰台を見ていたよ。

初孫だった私は、生まれたときから、ずっとおじいちゃんと一緒だったんだよね。2年後に生まれた妹の世話が大変だった母を助ける意味で、おじいちゃんの家でよくお世話になっていたことは、断片的にも、私の記憶にもあるよ。仕事場にも私を連れて行き、車で得意先回りをしたので、私の左の腕だけが日焼けしたこと、8人いた孫とは明らかに違う待遇で可愛がってくれたこと、社員旅行の中国にも連れて行ってくれたこと、成長してからも、あたたかく穏やかな目でずっと見守ってくれていることを、いつも感じていたよ。その愛された記憶は、今、私の財産となり、自信となり、毎日幸せに暮らせてるのも、その時のおじいちゃんの愛のおかげだといつも感謝してるよ。

それなのに……。あの日、おしいちゃんの病院の下まで行ったのに、明日来るからと、その日は病室に上がらなかった。明日は来なかった。どうしてあのとき、病室に行って、一目でも、おじいちゃんに会わなかったのか、どうして、おじいちゃんの手を少しでも握らなかったのか……。今でもずっと後悔してるの。ごめんね、おじいちゃん。最後におじいちゃんに会って直接ありがとうと言いたかった。おじいちゃんのことだから、そんなこといいよ、と優しく言ってくれると思うけど、そのことは今でもずっと思ってる。

だから、それからは、今しかこの瞬間はない、と思って、後から後悔しないように、会いたい人にはすぐ会う、しなきゃいけないことはすぐにする、伝えなきゃいけない言葉はすぐに言う、というようにしているよ。最後まで私に教えてくれたね。いつまでもずっとありがとう。おじいちゃんのこと思いながら、我が子のこれからの子育てもやっていくよ。今度逢ったときに、「えらかったなぁ」と久しぶりに褒められるように。おじいちゃんがくれた記憶をこれからも心の中で大切にするね。おじいちゃん、ありがとう。

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