父へ 20代 沖縄県 第15回 入賞

よーんなーよーんなー
大冝見 果鈴 様 27歳

「また、夏休みに帰ってくることを楽しみにしますよ。あまり頑張りすぎず、毎日元気に過ごしてください。父ちゃんより」。可愛いポストカードと一緒に、家で見つけた手紙の下書き。父ちゃんは手紙ではなく、マンゴーを送ることにしたんだよね。あの日、夏休みが来る前に、父ちゃんが送ってくれたマンゴーを食べきる前に、突然旅立ってしまったね。やさしい父ちゃんがいつまでも申し訳なさそうにしてたらいやだから、今日は父ちゃんを安心させたくて、手紙を書いてみることにしたよ。あれから六年、私は頑張りすぎず、毎日元気に過ごしています。無事に大学を卒業して、国家試験に合格して、父ちゃんが「ここで働けたらいいね」って言っていたところで働いている。相変わらず人にも恵まれてるよ。そしてあとになって知ったけど、父ちゃんの夢だった地球一周の旅もしたよ。もしかしたらどこかで会える気がしてたんだけど、地球のどこにも父ちゃんの姿はなかった。でも、いつもすぐそばに、私の中にいるんだってわかったんだ。ちなみに、「いつか結婚したら泣いてしまう」と言っていたけど、その予定はまだないかな(笑)。その言葉も、実はすごく嬉しかった。

 時間が経つほど会える日が近づいているはずなのに、一緒に過ごした日々から遠くなるようで眠れない夜もある。でも、いつも伝えたいことは、心の底から感謝してるってこと。今も私が色んなことに挑戦したくなるのは、失敗するたび父ちゃんが「いい勉強になったね」って笑ってくれたからだと思う。一生分の愛と言葉をかけて育ててくれてありがとう。父ちゃんがどれほど私を想ってくれていたのか、あとからあとから胸いっぱいに伝わってきて、毎日ごめんねとありがとうを心で叫んでる。だからどうか、そんな私の愛も伝わってほしい。伝わってるって信じてるよ。

 それから、覚えてる? あれが最後になってしまったけど、私が大学に戻るために飛行機へ向かう別れの瞬間。父ちゃんが大きい両手で強く背中を叩いて、前へ押してくれたこと。「がんばってこい!」って。なかなか痛かったけど、良かったよ。おかげで背中に温もりを感じたままここまで進んでこれたし、この先もずっと前へと進んでいける気がするから。よーんなーよーんなーだよ、って? 大丈夫。いつも言ってくれたからわかってるよ。よーんなー生きていくから、何も心配しないで笑って待っててください!

 自慢の父へ、あなたの自慢になりたい娘より

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