父さんが亡くなって、もう四半世紀が過ぎました。でもいつも襖の向こうに父さんの存在を感じています。
私は小学校の時に「兄妹三人の中で誰が一番可愛い?」と聞きました。父さんは「みんな同じだけ可愛いよ。兄ちゃんは体が弱いから気にかかって可愛いし、姉ちゃんは兄を助けて健気やから可愛い。お前は一緒に過ごす時間が一番短いから不憫で可愛い」父さんは普段は寡黙な人だったけれど、あの時の答えは最高の愛情表現で最高の答えだったと思います。
父さんにとって同じだけ可愛い子供達ですが、子供以上に愛する人がいましたね。それは母さん。母さんは最高の最愛の人でしたね。「母さんは料理がうまいな」「何をさせてもじょうずやな」時には涙声で感動を込めて妻を尊敬し、父さんは一生涯、妻を愛し続けました。
母さんが「生まれ変わったら私と結婚する?」って聞いた時「両親に相談して決めるわ」って言いましたね。ちょっとシャイでユーモアたっぷりの答えでしたが、あの答えは選択ミスです。母さんは今もあの言葉に傷ついているようです。
あまりに仲の良かった父さんと母さんでしたから、きっと淋しくてすぐに迎えに来るのではと心配しましたが、母さんは「父さんはあっちの世界で、新しい家を建てたら迎えに来てくれる。まだ家が建たないみたいや」って言ってました。今では「もしかしてあっちでイイ人見つけたのかも」って言ってます。でも私にはわかります。父さんは母さんのことが大好きだから、この世で楽しんでいる母さんを、あの世から眺めて喜んで、時には感激の泣き顔で、母さんの幸せを母さん以上に喜んでいるのだと思います。
昨日は母さんは仏壇の前で、時々リンを鳴らしながらフラダンスを稽古してましたね。今日は俳句の日。「マスカット 供えて仏間瑞々し」母は、「この俳句で特賞もらってくるわ」って出かけていきましたよ。
父さんと母さんは、住む世界は違うけど、心の交流がこちらまで伝わってきます。父さんの一番好きな母さんのこと、見守ってあげてくださいね。