父へ 50代 長崎県 第11回 入賞

お父さんへ
松永 和子 様 50歳

 お父さんが旅立って10年がたちます。そちらはどうですか。

私は相変わらず忙しく走り回ってます。少しは落ち着いたらと思いますが、性格はなかなか変わらないようです。元気な証拠と前向きにとらえてます。

お父さんが心配していた息子も、自分の障害を多少理解し、就労支援施設に通って、毎日作業をがんばっています。真面目で素直で、ちょっと甘えん坊ですが、優しい自慢の子に育ちました。

娘は兄の影響からか、障害者施設で指導員として働き始めました。今ではすっかり、息子のよき理解者として、また、私の相談相手として心強い存在になりました。

障害をもつ妹の面倒をみてきたお父さんだからこそ、私の息子に障害があるとわかったとき、本当に心配してくれましたね。そして、「辛いこともあるけど、その分喜びも大きいぞ。心配いらん」と言ってくれたお父さんの言葉が、どれだけ私に勇気をくれたことか。壁にぶつかるたびに、前に進む原動力として、今でも私の心の中で生き続けています。

常に私を励まし続けてくれたお父さん。今なら胸を張って言えます。

「私も息子も、大丈夫だよ」と。

どんな小さなことでも、喜び笑い合える術を身に付けました。辛いとき悲しいときは、素直に泣けるようになりました。困ったときは、手を差しのべてくれる仲間もできました。悩んだときはくよくよ考えません。きっと、何とかなるから。

先日息子が、「障害者でいるのもわるくないね」と言い、親として肩の荷がひとつおりた気がしました。だからお父さん、安心して見ていてくださいね。私も息子も、「良い人生だったよ」と言えるよう、これからもがんばっていきます。

 

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