「僕、来年からお年玉いらないよ」
今年のお正月、中学生になったゆうちゃんがそう言ったの。
お父さんは『五百円玉×(かける)歳の数が孫へのお年玉』って決めてたから、巾着袋に五百円玉をたくさん入れていたわよね。
「今年はいくつになるのかな?」
お父さんがおどけた口調で言いながら巾着袋を持ってくると、ゆうちゃんが隣にピタッと座って、「一、二、三、四……」と、二人で一緒に五百円玉を数えていた姿がとても微笑ましかった。このお正月行事が永遠に続くといいな、って心から願っていたわ。
でも、悲しいことにその願いはかなわなかった……。
お父さんがいなくなってからは、「はい、じいじからよ」と言って、お母さんがお父さんの代わりに巾着袋からお年玉を渡していたの。
今年のお正月のこと。
「僕、来年からお年玉いらないよ」
ゆうちゃんから思いがけない言葉が。
「だって、巾着袋の五百円玉が無くなったら、じいじがまたいなくなっちゃう気がするんだ」
お年玉をもらうのは嬉しかったけど、毎年少しずつ軽くなっていく巾着袋を見るのが寂しかったんだって。
そう言ってはにかんだゆうちゃんの目が、お父さんの目とそっくりだったから、お母さんも私も涙があふれちゃった……。
お父さん。お父さんが『わんぱく坊主』と呼んでいたゆうちゃんは、こんなに心優しい子に育っています。
そして、これからもずっと、じいじが大好きって気持ちは変わらないんだって。