毎日元気に隠居生活を楽しんでいた父さんが、急に息を引き取ってからもう十五年になります。強い人だったので、「父さんの死」をなかなか受け入れることができませんでした。
父さんは仕事一筋の人間でしたね。朝早く家を出て、夜遅くまで働いていました。そのため、父さんとはあまり話をする時間がありませんでした。たまの休みの日はいつも不機嫌で、子供だった私は、怖くて父さんに近づくことができませんでした。
私が高校生になり、進路を決めるときも、父さんは何も言いませんでした。私が学校の先生になりたくて、教育学部に入学したいと言うと、「そうか」の一言だけが返ってきました。その後、就職するときも結婚するときも何も言いませんでしたね。息子の私に興味がないのか、それとも愛されていないのかと思っていました。
でも、忘れもしないのは、私が教師になって初めて給料をもらったときのことです。初給料で母さんと父さんにプレゼントをしましたね。母さんはうれしくて涙ぐんでいましたが、父さんはそっけなく受け取っていました。気に入らなかったのかなと思い、少しショックでした。でも、父さんが亡くなった後、母さんから聞きました。
「あの日の夜、お父さん、あなたのプレゼントがうれしくて、涙流していたんだよ」
私は父さんの涙を一度も見たことがなかったので、驚きました。母さんはつけ加えました。
「お父さん、無愛想だったけど、あなたのことをいつも一番大切に考えていたのよ」
最期まで、無愛想だった父さんがそれほど私を愛してくれていたとは思いませんでした。
父さん、私もあなたと同じように、子供たちを愛して育てました。天国から見えますか。父さんが可愛がってくれた孫たちは、みんな立派に育ちましたよ。ありがとう。