時の流れは早いものですね。お父さんがこの世を去ってから、もう五年の月日が経とうとしています。この手紙が、お父さんに宛てる最初で最後の手紙になるでしょう。
私が生まれてから、いつもそばにいてくれましたね。私の思い出の中ではいつもお父さんが微笑んでくれています。悔しいです。もっと、そばにいたかった。
「お父さんはね、大佐だったんだ」。得意げに話してくれたのを今でも覚えています。自分の父が航空自衛隊のパイロットで、大佐だったなんて。幼い私でも父の偉大さを強く感じました。とても子煩悩で、いつも優しく時には厳しく、何が正しいのかを導いてくれた、お父さん。いつも立派で、人として最高の指導者であり、私の自慢の父親でした。
「お父さんの体に沢山癌があって、その癌が足にたまってしまったから、足を切らなくてはいけないの」。お母さんが、十歳の私にもわかるように説明してくれました。でもその声はしきりに震えていて、目には涙をいっぱい浮かべていました。
病院から帰ってくるお父さんは、どんな姿をしているのだろう。怖かったです。でも、「大丈夫!足が一本なくなったって、それくらいじゃへこたれないさ」と笑顔のお父さんを見て、私はとても安心しました。義足になっても変わらず私達家族のために働くお父さんの姿は、私の目には一人の戦士に見えました。
しかし、またすぐにお父さんは病院に行ってしまいましたね。癌がさらに悪化して、もう手の施しようがない。そう聞いた瞬間、何も考えられなくなりました。「お父さんはね、ブルーインパルスに乗るのが夢だったんだ」「でも、お前達がいるから、お父さんにはもう何もいらないよ」。そうベッドの上で語ってくれた時、涙が止まりませんでした。お父さんが亡くなって、母は毎日泣きました。妹からは笑顔が消えました。でも皆、今ではお父さんの死を乗り越えて、励ましあって生きています。つらいことも、うれしいことも分け合って、必死に生きています。お父さんの遺した家族は立派な戦士になったのです。
お父さん、私も夢ができました。それはお父さんに誇れる娘になること。いつまでもお父さんの背中を見て、どんなことも乗り越える、強く誇り高き戦士になります。だから、見守っていて下さい。それでは、また会う日まで。