小学生のころ、週末になるとよくおつかいをたのまれて、近くのコンビニに行きました。
お父さん、覚えていますか。おつりが足りなかった日のことを。
レシートとおつりを見比べて、「百円足りないな」と、お父さんがつぶやいたとき、胸がドキドキしました。「どうしたんだ? 」と訊ねられて、とっさに、「わからない」とぼそりと答えてしまいました。
コンビニまでもどり、店員さんに確かめて、いっしょに道に落ちてないか探しましたね。ポケットの中の百円玉が、ひどく冷たく感じました。
あのあとこっそり買ったラムネは、いつもよりうんと酸っぱく感じたな。
ついこの前ね、娘が勝手におさいふを持ち出しちゃったの。ちょっと遊んでくるって出ていったんだけど、帰ってきたとき、手さげバッグから家のおさいふを見つけてね。中を覗いたら、レシートが入っていたわ。問いただしたら。すぐに謝ってきた。でも、ちゃんと反省してないなって、直感がしてね。
「うそをついて食べるお菓子は、どんな味がした?」って訊ねたら、じっと黙っているから、もう一度そっときいたの。
「おいしかった?」って。そしたら、娘は泣きながら首をふったわ。
お父さん、あのとき私がうそをついていたことに、きっと気づいていたんだよね。裏切ってごめんなさい。
お金の大切さを教えてくれて、どうもありがとう。
どうか、愛娘がまっすぐ健やかに育つよう、天国から見守っていてくださいね。