前略、
もう一年が過ぎましたがそっちはどうですか?
あの時、お通夜の最中に破水したお嫁さんを抱えて息子達は、病院へ走りましたが、予定日より一ヶ月以上も早いお産となりました。「孫の顔を見るまでは…… 」と、あんなに頑張っていたあなたでしたが、とうとう待ちきれずに一緒に連れて行こうとしているのか? と私の頭の中は不安で一杯になりました。
でも無事に生まれて来てくれて、そして向こうのご両親に「元気な男の子でした。きっとお義父様が守って下さったに違いありません」と言って貰えた時は本当に救われた思いがしました。
次の日、葬儀の担当者さんから「こんな時に何ですが、おめでとうございます」と言って頂いた時も「ありがとうございます」と、喪服を着た者同士がとんでもない挨拶を交わしたのですが、祭壇の上から見ている穏やかな笑顔が、私と同じ気持ちなんだと感じました。
あれから日々の暮らしに戻っても、波のように繰り返し寄せて来るこの気持ちに押し潰されそうになります。台所のテーブルに着く度に向かいの席に座るあなたを見るのです。いつもは返事をするのが面倒臭くなるくらい話しかけて来るのに、今は何も言わず唯座っているだけ……これが寂しいという事なんでしょうか。
「バアバも早くジイジのとこ行きたい」
ある日ふっと漏らした言葉に、お姉ちゃんになった孫娘が反応しました。
「バアバがジイジのとこ行くんなら自分も行きたい! パパもママも弟も、みんなで一緒について行ってもいい? 」
ハッと目が醒めました。この子たちを連れて行く訳にはいきません…… そっちからお迎えが来るまで、こっちで残りの人生を精一杯頑張ります…… 待ってて下さい。
追伸、まだ納骨はしていません、もう暫くここに居て下さい。仏壇の鈴や木魚が孫のおもちゃになっています。一周忌の塔婆も頭からかじられてしまいました、ゆっくり休めなくてごめんね。妻より