平成二十一年一月三十日午前八時三十四分、母が亡くなった。それから三年近く経つが、未だ巨大な喪失感が私の中を占めている。
母も無く、父も無く、兄弟・姉妹も無く、妻子も無く……。
しかし、私は生きていかねばならない。そんな思いを手紙にしたい。
お母さん、ごめんね。
せっかく大学に合格したのに勝手にやめて。
「修の大学が決まってホッとした。ようやく肩の荷が下りた」、と安堵したのに。あの時は大声で言い合いをしたよね。ホントにごめんね。ボクはもっと偏差値の高い大学に行きたくて……。でも、一浪の末、何とか希望の大学に合格したから許してね。今にして思えば実にくだらないことでお母さんを困らせちゃってごめんね。
お母さん、ごめんね。
せっかく良い大学に入れたのにフリーターを四年もやってしまって。ホントに、ホントに、心配したよね。フリーターをしている間は一言も不安をぶつけなかったね。
でも、役所に就職が決まって、何年かして落ち着いた時に、ようやく話してくれたよね。 「あの時は不安で不安で仕方が無かった。でも、それを口に出したらアンタは絶対つぶれると思ったから言えなかったんよ。二人っきりの家庭で徹底的に話し合うなんて事は怖くてできなかった。だから……、本当に辛かったんよ」
ホントに……、ごめんね。
そして……、就職が決まったボクは一人暮らしをはじめた。お母さんは、お父さんとボクと三人で二十年近く暮らした家に一人っきりになっちゃたんだよね。
ボクが帰る時には本当に喜んでくれたよね。ボクもホッとした思いでくつろげたよ。ボクの勤務地は実家から百六十キロ近く離れた日本海の町、舞鶴だった。金曜日の仕事が終わって毎週のように実家のある大阪に帰ったね。でも、日曜日の夜に戻る時は辛かったな。
「このままずっと家に居たいな」と心底思ったよ。
お母さん、ごめんね。死ぬ最後の日まで一人ぼっちにさせて。そして、死ぬ瞬間を看取ってあげれなくて。なんかボク、謝ってばかりだよね。ごめんね。でも、ボク、がんばって生きていくから。
ありがとう。
お母さんの愛を受け切った息子より