「つたえたい、心の手紙」をテーマとした手紙募集を見た時に私はこの人しかいないと思った。亡き祖母である。とにかく本当に心から優しく笑顔が可愛い人だった。私は色々な事情があり祖父母に育てられた。祖母は何とか私の母になろうと必死にがんばっていた。ある日家計簿に日記を書いていたので、私も一緒に見る機会がありいつも私の事が書いてあった。日記の最後には母より……で終わっていて私は祖母だけどこの人が母だと心の底から思っていた。身体の悪い祖父母に迷惑をかけられないと思い進学を諦め、横浜に就職する事に決めた。出発の朝祖母から手紙をもらった。一枚の半紙にびっしりと祖母の今までの気持ちが書いてあった。何もしてやれなくてごめんね、淋しい思いをさせてごめんね、と、謝りだらけの手紙だった。私は汽車の中で泣きながら読んだのを今でもハッキリと覚えている。手紙の最後に五ヶ条の心得が書いてあった。人に迷惑をかけぬ事、目上の人に頭を低くする事、素直な心を忘れぬ事、いつも笑顔を心がける事、意志を強くもってがんばりぬく事、以上守って下さる事願います、と書いてあった。半紙なので何度も読んでるうちにボロボロになってしまったけれど私の宝物だ。五ヶ条の約束ではなく、五ヶ条の心得というのが押しつけをしない祖母らしいと思った。今でも五つの事を全部守れているわけではないが、常に気にかけて努力はしている。面と向かって感謝の気持ちを話した事はないけれど、心からの温かい愛情を本当に本当にありがとう。ごめんなさいを沢山言わなくちゃいけないのは私の方です。教えてもらった事は胸にきざんで今度は自分の子供に伝えていきます。
祖母へ
40代
神奈川県
第3回
入賞