お義母さん……。長い間、おばぁと呼んでいたのでおばぁがしっくりするみたい。おばぁに手紙を書くなんてはじめてですね。
あのね、おばぁ、ずーと、ずーと前になるけど覚えているかな。あのガラスびんいっぱいの十円玉の事。本当、あれにはびっくりしちゃった。ハイと手渡された時、ずっしりと重たくてさ、よく集めたもんだと感心したよ。
あの頃って、私達夫婦間ぎくしゃくして、おばぁにはいろいろと心労させ、その上、遠くへ引越しをしなければならなくなって、淋しい思いをさせてしまったね、ごめんなさい。だから、おばぁの優しさが痛い程わかっていたの。嬉しくって涙が出そうだったのよ。今なら便利な携帯電話があるけれど、あの当時といえば公衆電話を利用していたものね。
アパートの二階の片すみにピンクの公衆電話が置かれていたの。おばぁからもらった十円玉を握りジーコ、ジーコとダイヤル回し「元気だよ」「そうかい」と、あとはおばぁの笑い声にホッとし心が軽くなったっけ。そして一言「ミートンダアヤーチャア、ティチドウ」(夫婦はいつもひとつだよ)と方言で教えてくれたね、本当にありがとう。
そして今、子供達はそれぞれ家庭を持ち幸せに暮らしているよ。そうそう孫が二人います。可愛くってビタミン剤のよう。見ているだけでファイトがでるの。それからね、びっくりしないでよ。ふたりで老人ホームへ行って、三味線を弾き、そばでオンチの私が歌っているのよ。ホームのお年寄りの笑顔とパワーを沢山もらって日々楽しく過ごしているの。
だから安心してね。きっとおばぁが見守ってくれているからかもね。
おばぁ、いつもありがとうネ。