今朝もあの子があなたの写真に、「パパ、おはよう」って話しかけてたの、聞こえた? 最近は男の子よりも元気で、来年からいい子に幼稚園へ通えるか、ちょっと心配なんだ。
もうすぐあなたの36歳の誕生日になるね。
「俺は太く、短く、濃い人生を送れればいい」
そう言って笑うあなたは力強くて、誰もがもっとずっと一緒に居られると思ってた。
「胃ガンだって。上手く治療出来て5年だって。信じられないよな」
あまりに突然で残酷な現実を、悲しみを押し殺して涙を見せず話したあなたの目を、私は今も忘れられない。その時、私は決めたの。あなたにひとつでも多くの笑顔を覚えておいてもらうために、私は泣かない、って。
あなたはホントに強い人だった。度重なる検査にも、辛い抗がん剤治療にも負けずに、おかあさんや先輩のため、私やあの子のため、支えてくれる全ての人のためにって頑張ってくれたよね。私の心配ばかりして、体調みながら仕事もして、もう一度家族で過ごすんだっていつも言ってた。私もその日が来ることを信じてたし、願ってた。
でもね、ホントは恐かった……。日々やせて、体力が無くなっていくあなたを見ていると、あなたを失ってしまうんじゃないかって、考えたくなくても頭に浮かんで、ひとりで泣いた夜もあった。車の窓から桜を眺めて「キレイだな」って呟いてそっと涙を流したあなたを見た時、胸が苦しくて私も隠れてそっと泣いた。
私、結局強くなれなくて、泣き虫なままだった。ゴメンね。一番辛くて恐かったのは、あなたなのに。私はあなたにちゃんと笑顔を見せて居られた? 私はあなたに“幸せ”をあげられたかな? 何もしてあげられなくて、ホントにゴメンね。
最期は急な知らせで、きちんと会話も出来なかったけど、手を握りながらあなたを看取れてよかった。だけどもう一度、ちゃんと目を見て伝えたかったよ。いつまでも大好きだよ、ありがとう。って……。
今でもあなたの居ない日常なんて信じられなくて、時々泣きたくもなるけど、だけど大丈夫。あの子はあなたがこの世を生きた証だから、あの子の笑顔が私にチカラをくれる。あなたのように優しくて、心の美しい強い子に育てていくから、どうか空から見守っていてね。
最愛の夫、健太くんへ……。