最期まで呼べずに、ごめんなさい。
本当は呼びたかったんだよ。
心の中では呼んでいたんだけど、口に出せなかった。
勇気を出して呼べばよかった。
「お母さん」と。
実母の病死や私自身の離婚、環境の変化などその頃の私には、かかえきれない程の葛藤がありました。お母さんとの出逢いも葛藤の一つでした。父の再婚相手として、一歩引いていました。そんな私に、お母さんはいつも優しく見守ってくれましたね。
口数は少なかったけど、温かいまなざし、しっかりと感じていました。
何より、お母さんが作った食事はとてもおいしく、心まで栄養が浸み渡ったこと、よく覚えています。
お母さんが作った、具だくさんの太巻、私は大好きでした。
次第に、様々な葛藤が薄れていくことを感じながらもお母さんと呼べなかった。
私とお母さんが台所で話をしていると、父がうれしそうに、ベランダでタバコを吸っていましたね。
その後ろ姿からは、
「無理してお母さんと呼ばなくてもいいんだよ」
という私へのメッセージを伝えているかのようでした。
お母さん、生きている間に呼べずに、ごめんなさい。
そして、父と再婚してくれてありがとう。