姉へ 70代 青森県 第5回 銀賞

天国の姉ちゃんへ
平野 好 様 70歳

 会いたい、姉ちゃんに会いたい。

なんでそんなに早く逝っちゃうんだよ、そんなのないよ。乳癌が見つかり入院して一ヶ月だよ、俺、東京へ行ける訳ないこと知ってるよね。ごめん俺、怒ってないから。でもただ悔しい。姉ちゃんにつたえたいことあったのに。

姉ちゃんって弟の俺のことばかりいつも心配してくれてたよな、自分のことは後回しにして世界一やさしい姉ちゃんだった。

父ちゃんが早死にし、母ちゃんは俺たちのため、昼も夜も働き、姉ちゃんが俺と妹たちの面倒を一切見てくれてた。

俺は体が弱くチビだったから小学校の五年まで砂利道をいつも手をつないで、俺、恥ずかしかったけどうれしかったよ。

俺が中学を出て東京さへ就職する時、三年前から都会で働いていた姉ちゃんが上着から下着まで、少ない給料を貯めたお金で買って送ってくれた荷物の中の手紙を読んでた母ちゃんが「ゴメンよ、勘弁ナ」って泣いていた。

その母ちゃんも亡くなり姉弟妹だけになってからも結婚した姉ちゃんに会いたくて毎月のように行き、そうそう決まって帰りのバス停で「お金あるの」ってもう大人なのに。

それから何年か経ち俺が病の後遺症で重度の障がい者になって田舎へ帰る時「代わってやりたい」って号泣、心配の掛け通しだったね。

今、思えば姉ちゃんの人生の半分は駄目な弟の俺のために、そう思うと心が痛いよ。時は流れ、姉ちゃんは自分の体の異変に気づかず癌に奥深く蝕まれていたんだね。それなのに俺は動けず会いに行けなかった。

もう一度でいい、姉ちゃんに会いたかった。

姉ちゃん、俺、七月に甲状腺癌が見つかったんだけど姉ちゃんに知られずによかったよ、また泣かれるからさ。

俺、姉ちゃんにつたえたかったことを今まで照れくさくって言えなかったけど、天に向かって叫ぶね。「大きな愛を、ありがとう」

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