母へ 30代 熊本県 第10回 佳作

天国のお母さんへ
髙戸 ひとみ 様 32歳

 私の大好きなお母さん。天国での生活はどうですか。じいちゃん、ばあちゃんと親子水入らずで仲良く暮らしていますか。

お母さん、人間ドックで腎臓にガンが見つかりすぐ手術したけど手遅れだったよね。でもお母さんは保育園の園長先生、抗がん剤を飲みながら亡くなる前の月まで仕事を続けた責任感。本当にすごいと思います。私にショックを与えない様にと、自分で余命を聞き、ある時ヒョイと「あと二年だって」と何でもない風に私に言った事覚えているかな。私はお母さんを押しのけ、病院のベッドで泣きました。「泣いても仕方ないよ。お母さん、あんたが困らない様に家の事、何がどこにあるか手紙に書いておくからね」。お母さんは他人事の様に私に言ったよね。「私も一緒に死ぬけん、そがん手紙要らん」と言うと、「それだけは絶対に許さないよ」。お母さんははっきりと厳しい口調で私に言ったね。どうして大好きなお母さんがいない世の中で、私だけが生きていかねばならないのだろう。

二年と言われた余命、でもお母さんの病状は急激に悪化していったね。腹水でパンパンにふくらんだお腹、足は腫れ必死に痛みをこらえ続けたお母さん。やがて昨日と今日の出来事の区別がつかなくなり、私は主治医に呼ばれ「あと一週間」と告げられた。只涙がポロポロこぼれた。お母さんにはとても言えなかった。強くて、人一倍優しく元気だったお母さん。痛がって転げまわるお母さんを見て、「延命措置をしてくれ」なんて主治医に言えなかった。「出来るだけ痛みや苦しみがない様にお願いします」としか。そんな状況下でもお母さんは見舞いに訪れるすべての人に「この子が私の後を追わないように見てやって下さい」と繰り返し続けた。自分の苦しみや痛みより最後まで私の心配をしていたお母さん。

見ていますか。天国のお母さん、私は頑張って生きているよ。強くあなたの姿を胸に。

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