母へ 60代 千葉県 第7回 佳作

お義母さん、ありがとう
安井 伸子 様 60歳

 お義母さん、天国でも周りの人に毒舌を吐いていますか? 私も嫁いでお義母さんとは、二十六年暮らしましたね。共に生活している時は、一言、一言、嫌味を言われ、やり直しをさせられ、もう嫌で嫌でたまりませんでしたよ。よく畑へ行っては草を取りながら、お義母さんに言われた事を思い返して涙しながら「このクソババアー動けなくなったら見てやるもんか、知るもんか」とよく思いましたよ。サラリーマン家庭なら、主人に泣きついて、別居してアパートでも住めばよかった事だったかも知れないけど……自営業、仕事道具抱えて引っ越しなどできなかったよ。

私ね、前向きに考えて自分なりにがんばったんだよ。おかげでね、今思い出すと、いろいろお義母さんから、知らず知らずの内に教えてもらってたんだね。その時は、私にとっては、うるさくて嫌味ばかり言う姑にしかとれませんでしたが。一緒に畑に出てビニールマルチの敷き方、ビニール掛け、赤飯の蒸し方、天ぷらの揚げ方、漬物、あっそうそう、我が家の白菜漬けは、塩振ってから、ビニールかけて上から踏むんだよね。やってますよ。安井家の手作り味噌も、お義母さんに教えてもらった塩加減で、今は一人で作ってますよ。大豆の茹で泡が吹きこぼれないようにサラダ油をまわしかける事も忘れてないよ。孫もおいしい、おいしいと食べてくれます。一年に一回の冬の手仕事ですが、作りがいがあります。みんなお義母さんのおかげだね。今は私の娘にも教えています。買えば何でもあるけど、一年家族が食べる貴重な発酵食品ですものね。

平成十七年、五月二十六日、突然狭心症で逝ってしまったけど、お義母さんから、たくさんの生活の知恵、食、教えてもらったので、とっても今では役立って助かっています。みんなお義母さんのおかげだよ。ありがとうね。九月十二日は、お義母さんの誕生日でいつも赤飯蒸かして、お祝いしてたね。今でも九月十二日は、赤飯を蒸かして仏壇に供えています。元気で生きていたら八十九歳だね。この日はね、家族でお義母さんの思い出話だよ。娘がね、おばあちゃんの作ってくれたしょうゆ入りオムライスが、懐かしいって言ってますよ。

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