叔母/伯母へ 40代 静岡県 第7回 入賞

おばちゃんに訊きたかった事
石黒 弥生 様 47歳

 おばちゃんに訊きたかった事が一つある。

私が17歳の時、父の再婚相手との不和から、おばちゃんがおじちゃんと一緒になって「うちへおいで」って言って私の事を預かってくれてから30年、結婚したあとも、実母のように接してくれて感謝に尽きない。

おばちゃんは、父の弟の嫁なのに「本人がうちへ来たければ、うちは一向に構わない」って、堂々たるものだった。

元気のいいおばちゃんとは、時々、言い合いにもなったけど、殆ど笑い交じりで、本当に明るくて楽しい人だった。

そのおかげで、人生に影が差していた筈の私が明るく逞(たくま)しく生きてこられたのだと思っている。おばちゃん譲りだね、きっと。

おばちゃんは、明るいついでに、ある時、私からの電話で「ガンになっちゃったみたいよ」って他人事みたいにカラッと言った。

「え?誰が?」「おばちゃんが」「え、だから誰が?」「だから、おばちゃんだってば」ってどこまでもあっけらかんとしてるから、逆に私の方が受け入れられなくて大変だったんだからね。

号泣する私に「泣かなくっていいって。おばちゃんだよ?大丈夫に決まってるじゃん」本当におばちゃんは強い人です。

ある時、入院中のおばちゃんに電話したら、なんだか様子が違うので、なんとなく、今言わなきゃって思って「あの時、おばちゃんがうちにおいでって言ってくれて、あれはホント私にとって神の声だった」そう言った。

そしたら、途切れ途切れの声で「おばちゃんこそ……弥生が優しくしてくれて……女の子も中々いいなぁって思ったよ……」って言ってくれた。それが最後の会話だったから、あの時訊けなかった事、これから訊くからね。

OKなら、思いっきり、いいお天気にして下さい。

今度生まれてくる時は、おばちゃんの娘に生まれてきてもいい?

関連作品

  1. 想い

  2. 父さんのアイスクリーム

  3. 父の文箱

  4. 答えにたどり着くまでの計算式

  5. お母さん、ありがとう

  6. 待てど暮らせど

PAGE TOP