おばあちゃんが亡くなって、おばあちゃんのことよく考えた。やさしいやさしいおばあちゃん。私、あやまりたいんだ。
おばあちゃんのつくった野菜。あまり食べなかった。食べたくなかった。
トマトが嫌だった。ぼこぼこしてて形が悪い。熟してるのに青いところもあって、茶色い線も入ってた。トマトなのに泥もついてた。食べるの嫌だなって思った。
白菜も嫌だった。虫喰いで穴だらけ。うんちもいっぱいついてた。緑色の葉っぱのところに毛虫がくっついているのを見るとぞっとした。
スーパーに並ぶ野菜に憧れた。スーパーの野菜はきれい。おばあちゃんの野菜はきれいじゃない。たくさん家に掘ってあるのに、「野菜はスーパーで買おうよ」と、母にこっそりねだったこともあった。
おばあちゃんが亡くなって十三年。本当はおいしかったんだろうね。今、私トマト大好きなんだ。今年の夏は、家の畑が豊作で昨日なんて一人で七個も食べたよ。白菜も大好きだよ。冬になったらすき焼きには欠かせないし、鍋にも漬物にも中華丼にも。今家族が増えたから、どんどん食べる。白菜なら一食に一玉なくなるくらいだよ。
トマト食べると、おばあちゃんの顔を思い出すよ。あんなにつくってくれたのに。食べればよかったな。
泥だって虫だって、うんちだって洗えばとれるよね。そんなこと今は平気。ちっとも嫌じゃないよ。おばあちゃんの白菜は虫も食べたくなるくらい安全でおいしかったんだろうね。もっと食べればよかったよ。
白菜つくるのって難しいね。なかなかうまく葉を巻いてくれない。おばあちゃんなら、こんなときどうしたかな。野菜づくり、教えてもらえばよかった。何かっこつけてたんだろうね、私。私、本当に、おばあちゃんに冷たかったよ。
おばあちゃんが生きてるときに、おばあちゃんの前で「おいしい」って言って、もっとトマト食べればよかった。ごめんね。おばあちゃん。あやまりたいんだ。